中国人との国際結婚の手続き
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*中国人国際結婚手続き2

Q:中国で日本人と中国人が中国法で創設的に国際結婚の手続きをする場合の典型的な手続(形式的成立要件)について、以前の手続と近時の手続とを比較し、かつ、日本での日本法の国際結婚の手続きの創設的婚姻届の手続きの場合と比較して下さい。(試論)2005Aug11
A:

 

以前の手続

近時の手続

日本法の手続

当事者出頭の要否*1

不要

国際結婚手続の担当機関*2

結婚登記管理機関

結婚登記機関

市区町村(戸籍課等)

実質的審査権限*3

無(但し、法務局等に注意)

国際結婚登録の要否*4

要登記

要登記

要届出

成立時期*5

結婚証の取得時

同左

結婚届受理時(届出日に遡及)

婚前健康診断の要否*6

原則、不要

一切、不要

成年の証人二人の要否*7

不要

不要

必要(民法7392項。なお、7422号但書に注意。)

所用時間*8

申請から原則1か月以内

原則、即日

資料の揃い具合等により差異がある。

国際結婚の証明手段*9

結婚証、結婚公証書

同左

婚姻届受理証明書、戸籍謄本、婚姻届(書)記載事項証明書


*1 日本法では、当事者が出頭する必要はない。したがって、国際結婚の手続きをする際、結婚届に署名がしてあれば、第三者が持参してもよいことになる。それゆえ、国際結婚の手続きで、結婚届を出すその時点において、中国人側が物理的に中国に在っても、日本では国際結婚可能であって、このような取扱を認容することに従前の中国政府が疑念を呈していたものと解される。ただ、現在の日本の実務では、当事者が出頭しない場合、基本的に、当事者へ葉書を郵送する等で意思確認を行う等の適正手続に努めている。また、一般に、当事者が出頭しない結婚届は稀であって、市区町村の担当者は偽装結婚等を疑う場合があると思われる。
 もし、日本法で当事者双方の出頭を形式的(手続的)成立要件としたらどうなるか。入管に収容されている事案につき、国際結婚の手続きができないことになり、著しく不都合が生じることが予想される。
 なお、形式的成立要件ではないが、重要なこととして、一般に、日本人男性と外国人女性という組み合わせの国際結婚が多数発生する国においては、当該国において、国際結婚斡旋(紹介等)等の行為が禁止されて違法行為になっている場合があることに注意されたい。たとえば、「上海市では、斡旋業者による日本人男と中国人女の婚姻によるトラブルが相次いだことから、・・・斡旋活動が全面禁止されるに至って」いると記載されている文献がある(上海市渉外婚姻管理暫行弁法5条。岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」44頁。)。ただたとえそのような制度上の建前が仮にあっても、実態として、国際結婚は行われている。

*2 新条例では「管理」の文言が削除されている。旧条例5条では、中国側の国際結婚の手続きに係る結婚登記管理機関とは「都市においては、街道弁事処又は市街区若しくは区を設けていない市の人民政府民政部門、農村においては、郷、民族郷又は鎮の人民政府」とされていたが(岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」172頁)、新条例2条2項では、「中国公民と外国人間の・・・間で行う婚姻登記機関は、省・自治区・直轄市の人民政府民政部門又は省・自治区・直轄市の人民政府民政部門が定めた機関とする。」との規定が存する(「戸籍時報」562、114頁。)。たとえば、これを上海の場合でみれば、中国側の国際結婚の手続きを担当するのは、上海市民政局渉外婚姻登記処とされる(在上海日本国総領事館)。
 他方、日本の場合、国際結婚の手続きの担当機関は、基本的に市区町村に固定してあり、これ以外の機関は通常は想定されていないが、「報告的婚姻届け」を在外公館に出すような場面もありうる。ただ、その場合でも在外公館を経由し、市区町村へ送られる。なお、日本での「創設的婚姻届け」の場合、日本の法務局へ直接資料を提出することはできないのが原則であるが、国際結婚の手続きにおいては、頻繁に法務局に受理照会になり、その受理照会中は法務局へ直接、追加書類等を提出することは可能であって、また時間等の関係で必要な場合もある。

*3 (成立要件ではないが、便宜上ここに記載した。)
中国の結婚登記官吏には、「実質的審査権限」があるのに対し、日本の官吏には、「実質的審査権限」が存しないとされる(加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」75頁)。この意味は、届書や添付資料等の外形を標準とし(一種の外形理論)、いわば外観で判断するという趣旨と解することが可能である(なお、「新版注釈民法」21、283頁。)。したがって、たとえ国際結婚であっても、日本法の手続きでは、「当事者を喚問したりあるいは証拠を提出させたりしなければ判別しにくい事項までも審査する権限を有しない」(前掲書、283頁。)。これが建前であって、日本のどんなに専門的な文献にもその程度のことしか書いてはいない。しかし、実務はそうとは言えない。たとえば「当事者を喚問」することはあるし、「証拠を提出させたり」することもある。また、「当事者を喚問」した際の質問は、当事者の出会いのきっかけから現在に至るまで経緯にまで質問が及ぶこともある(入管が目を付けた場合ほどではないが。)。日本人同士の夫妻には想像もつかないかもしれないが、これが国際結婚の場合で、かつ、法務局へ受理照会された場合の、しばしば見られる事実である。
 私見では、日本の戸籍実務は、建前では実質的審査をしないということにはなってはいるが(東京地判明44・7・12)、実際には実質的審査を行っており、その戸籍官吏の心証が種々の重要な処分に影響を与えていると解される。たとえば、実質的審査を行って、不受理にはできないが、形式的な理由(書類が足りない等。)に藉口(しゃこう)して受理を事実上拒んだり、引き延ばして時間を稼いだりすることは、戸籍テクニック的には、相手(一般市民)が無知である限り、可能である。しかし、国際結婚の手続における偽装結婚が社会問題化している昨今、戸籍官吏の実質的審査権限は十分検討する余地もあるであろう。なお、中国の「婚姻登記員は・・・試験に合格した後に初めて婚姻登記業務に従事することができる」という資格制である(新婚姻登記条例3条1項。「戸籍時報」562、114頁。)。他方、日本の戸籍官吏は、基本的には、専門職ではなく、たとえば、3年程度で配置が変わる等、その実態が問題ではある。その結果、本当に詳しいのは日本全国でごく一部だけということになっていて、一般市民が通常、市区町村で接するような職員は、難解な渉外婚姻(国際結婚の手続き)に対応することは困難であり、かなりの事案が「瑕疵」のあるまま、いい加減に処理されている。なお、戸籍に国際結婚が載っても(俗語にいう「籍が入る」こと。)、国際結婚が有効とは限らないことに注意されたい。

*4 但し、中国法では、未登記結婚を直截に絶対無効とするのではなく、未登記結婚を事後的に登記した場合、遡及的に有効とするとの扱いがみられる(修正婚姻法8条後段。最高人民法院・若干問題解釈4条。加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」73頁。)。これは未登記婚の多い農村女性の保護等を考慮したものとされるが、日本では中国のような立法事実は無いこともあり、未届の結婚(内縁等)は法的な結婚としては、無効である(「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」。民法739条1項。)。

*5 そもそも、およそ国際結婚は、日本の民事法の通説的解釈では、一種の「契約」にほかならない。契約とは合意である。この点、結婚証の取得を成立時期とした(婚姻法8条中段。加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」70頁。)のは、「婚姻登記の普及を貫徹しようとする中国政府の意向の表れ」とされる(岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」42頁)。これを日本民法的に解すれば、あたかも結婚が結婚証を要する「要物契約」かのように思われる。これに対し、日本法では中国婚姻法のような意味での要物性(たとえば、籍の入った戸籍謄本ないし受理証明書を交付しないと成立しない等。)はないが、かといって諾成契約でもない。すなわち、「届け出」し、かつ受理されて成立する。
 なお、戸籍実務的には、「受理」と「受付」は区別される場合が多い。たとえば、国際結婚の手続きで、即時に受理できず、受理照会として法務局へ照会する場合でも、「受理照会証明書」(の類)は、「受理証明書」とは区別された形で発行可能であり、そこに「受理」は無いが、「受付」はされている、あるいは「預かり」がされているという状態を観念する意義が存するからである(結論同旨、「新版注釈民法」21、282頁。)。実務的には、「受理照会証明書」(の類)は、入管に収容等されている外国人の退去強制手続の場面で意義をもつ場合も多い。
 なお、成立時期について補足しておく。先に中国で国際結婚の手続きをした場合、中国法で国際結婚が有効に成立した時点で、同時に、日本法でも有効に成立していることに注意されたい。ネット上でよく誤解されている点である。したがって、日本人が中国人と中国で、中国法で、国際結婚の手続きをしたが、日本には未届の場合でも国際結婚は「日本法でも」成立しており、その場合、中国人側は、たとえ日本人側が抵抗しても、「単独で日本へ婚姻届を出すことができる」。けだし、これが「報告的婚姻届」の「報告」たる意味だからである。

*6 徹底的に身体を検査する婚前健康診断は新しい婚姻登記条例によって、基本的に必須ではなくなった。しかし、一部では過渡期のためか、未だなお、婚前健康診断が残存しているともいわれる。また、中国当局は、基本的に任意としたものの、行うのが望ましいとの立場である。但し、筆者の知る限り、最近は国際結婚手続きで健康診断の話を聞くことはほとんどなくなった。
 この点、旧婚姻登記管理条例9条3項は、「婚前の健康診断を実施している地方において婚姻登記を申請する当事者は、必ず指定医療保険機構において婚前健康診断を受け、婚姻登記管理機関に婚前健康診断証明を提出しなければならない。」と規定されていた(岩井伸晃著「中国家族法と関係諸制度」173頁)。このことの意味は、中国でも地域によっては、旧婚姻登記管理条例の施行下においても、不要の場合もあり得たということである(加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」76頁。)。しかし、現在では、辺境地域等でなくとも、基本的に必須ではなくなったということになる。
 他方、日本法の場合、婚前健康診断を義務化する法令は憲法24条、13条等に違反し、違憲無効と解される。なお、日本法で「条例」とは地方自治体の制定する法規範のこといい、中国法の用語法にいう「条例」とは全く異なる。

*7 日本法で成年の証人二人を要件とした趣旨は、基本的には当事者の結婚意思の確認に存するとされる(「新版注釈民法」21、252頁。)。中国法では当事者の本人出頭を徹底しているのに対し、日本法ではそうでもなく、郵便による結婚届出すら認容しているので、「成年の証人二人」を要件として、適正化を図ったとも解釈可能であろう(なお、加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」81頁。)。国際結婚の手続きに係る入管実務との関係でいえば、この「成年の証人二人」に誰がなっているのかが、届書記載事項証明書等の形で重要な意義を有する場合もあり、偽装結婚防止等の見地で、「成年の証人二人」の意義は存すると解するべきである。ちなみに、現在の日本の結婚届書の書式には、「署名を偽造した者は犯罪として処罰されます。」の類の印刷文は存しないが、ほとんどの人は処罰されることを知らないと思われ、警告するために、印刷しておくべきであると解する。国際結婚の手続きにおいては、結婚届も離婚届も署名の偽造犯罪は極めて多い。
 なお、この日本民法739条2項の「証人二人」の要件を欠いても、「受理」された場合、いわば742条2号但書の反射的効果により、有効である(新版注釈民法21、307頁は「安易な便宜的立法」とする。)。そのような場面は頗る稀にも見えるが、実務的には案外、表面化しないだけで、(客観的に)適用されている場面が少なくはないと思われる。

*8 加藤美穂子著「詳解中国婚姻・離婚法」498頁。

*9 形式的成立要件ではないが、便宜上併せて整理しておいた。なお、中国で先に国際結婚の手続きをした場合、国際結婚時に、日本での(報告的)結婚届出用に、併せて、結婚公証書、出生公証書、国籍公証書を得ておく場合が多い。このような場面の場合、中国人側の各種身分証明関連書類は、日本の結婚届用と、入管用に複数部取り付けておくことが望ましい。なぜなら、日本の結婚届の役所と入管は全く別の役所だからである。そして、入管は、国際結婚の証明としては、日本側(戸籍)と中国側(結婚公証書等)の両面を観るのが原則である(在特の場面は除かれ得る。)。

●資料●
[(新)婚姻登記条例]
これについては、現時点では、日本語での研究者の文献がほとんど無いので、原文を当たる。
中華人民共和国民政部
http://www.mca.gov.cn/redian/redian1.htm
http://www.mca.gov.cn/redian/neiye5.htm
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