フィリピン人との国際結婚の手続
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*フィリピン人国際結婚手続き5

Q:日本人とフィリピン人とが、日本で創設的に婚姻する場合(日本を婚姻挙行地とする場合)と、フィリピンで創設的に婚姻する場合(フィリピンを婚姻挙行地とする場合)とで、当事者の婚姻の「実質的成立要件」(法例13条1項)と「形式的成立要件」(婚姻の方式。法例13条2項、3項)は、いずれの国の法律によるでしょうか。国際私法の解釈を教えて下さい。
A:日本法の国際私法である法例は「法例」という名称の「法律」である。法例13条はこの婚姻の際の実質的成立要件と形式的成立要件の準拠法を規定している。それによれば、「婚姻成立ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム」(13条1項)から、実質的成立要件は各当事者の本国法に拠ることになる。他方、形式的成立要件(方式の問題)は、「婚姻ノ方式ハ婚姻挙行地ノ法律ニ依ル」(2項)、「当事者ノ一方ノ本国法ニ依リタル方式ハ前項ノ規定ニ拘ハラズ之ヲ有効トス但日本ニ於テ婚姻ヲ挙行シタル場合ニ於テ当事者ノ一方ガ日本人ナルトキハ此限ニ在ラズ」(3項)から、結局、日本を婚姻挙行地とし、当事者の一方が日本人であるときは、13条2項により、「婚姻挙行地ノ法律」、すなわち、日本法に拠ることになる。
 以上によれば、日本法の解釈では、婚姻挙行地がフィリピンであるときはもちろん、日本であるときでも、フィリピン人の実質的成立要件「だけ」は、フィリピン法に拠る(法例13条1項)ことになる(なお、形式的成立要件、つまり方式は法例32条に関わらず、挙行地が日本である限り、フィリピン人側も日本法に拠らねばならない。)。 
また、法例32条は、「当事者ノ本国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其国ノ法律ニ従ヒ日本ノ法律ニ依ルヘキトキハ日本ノ法律ニ依ル」と規定しているが、「其国ノ法律」に該当すると解されるところのフィリピン民法15条は「家族の権利および義務あるいは個人の身分、社会的地位および法的能力に関する法律は、国外に居住している場合にも、フィリピン国民を拘束する。」(渉外身分関係先例判例総覧・法令編。なお、奥田安弘他訳「フィリピン家族法」27頁。)とあり、また反致の規定も無いと解されるので、反致は成立せず、原則どおり、婚姻挙行地がフィリピンであるときはもちろん、日本であるときでも、フィリピン人の実質的成立要件は、フィリピン法に拠る(法例13条1項)ことになる。この点は中国の場合と異なるので、注意しなければならない。要するに、法例32条の反致が成立するか否かの差異である。
なお、仮に婚姻のその時点で物理的にフィリピン人側がフィリピンに在っても、日本の市区町村に婚姻届する場合には(たとえばフィリピンに在るフィリピン人の婚約者から署名のついた婚姻届書を郵送してもらい、それを持って日本人が日本の市区町村へ行く場合。)、婚姻挙行地は日本と「解釈」される「はずである」が、現在の市販の公刊物はそこまで言及しているものはほとんど無い。見当たるのは、大著の奥田安弘他訳「フィリピン家族法」28頁上段で言及がある程度である(なお、そこに記載されてある「中華人民共和国との間で同様の問題がある」の箇所は改訂が必要である。)。このような場合、まず、日本法では婚姻挙行地は日本と「解釈」され、有効であるが、フィリピン政府の解釈が、かつての中国政府のような解釈を採用する場合、フィリピン法では婚姻挙行地をフィリピンと解して、「フィリピン家族法3条3号(筆者注:本人出頭主義を規定する形式的成立要件)に違反する婚姻として」、形式的成立要件を欠き、「無効」になる(跛行婚。はこうこん。)可能性が存する(前掲書28頁。)。
渉外家事法は、元々、研究者等の層も薄く、体系書等にも乏しいが、フィリピンは輪をかけて乏しい(もっとも、ロシア等に比べればはるかにマシなのだが。)。法律雑誌でも十分ではなない。筆者は「アマゾン」で英語ベースのフィリピンの法律書の文献を買おうと思ったが、ほとんど品切れであった(USのサイトのほうでも同様。)。まともに調べようとすると、最も大規模な大学図書館や国会図書館等の洋書コーナーに行くことになろう(確実に日が暮れる。)が、奥田教授によれば、日本では調べることすら困難で、何故かスイスで前掲書を完成させたとされる(前掲書6頁)。また、その「フィリピン家族法」等では、原著自体に誤りも発見する(同書92頁訳注)等、検討は仔細に及んでいる。このように国際私法学会の重鎮(奥田教授については、著書や連載記事を全部読むとよい。)ですらこのような苦労をするほどなのであって、インターネット上の「掲示版」等で無責任に回答できるレベルの話ではない。「スペースシャトル」を作るにはどういう数学や技術や設備が必要ですか、一人で作れるようにゼロから全部教えて下さい、また墜落する等の失敗の無いようにして下さい、という質問を掲示版で聞くようなものである。
なお参考までにいえば、フィリピン人(外国人)と日本人の「創設的」婚姻届を、フィリピン(外国)に在る日本の在外公館に届出ることはできない(日本人同士なら可能。レジストラ111・81)。よく誤解されているが、その場面での在外公館でできるのは「報告的」婚姻届であるに過ぎない。(レジストラ111・364。)。

以上「等」をまとめると、以下のようになる(なお、奥田安弘他訳「フィリピン家族法」26頁以下、「戸籍」745・59、同770・79)。これを一般人に理解せよというのは無理であろう。法はエンジニア的というか、法技術的な側面もあるので、やむを得ない。ただ、最近インターネット上に安易な解説が目立つので、警鐘を鳴らす意味で、書いておく意義はあろう。しかし、責任を負っている実務家のどのくらいがこういうことを意識しているのであろうか。

[フィリピン法の視点ないし成立要件] 試論2005Aug13

 

日本で婚姻(婚姻挙行地)

フィリピンで婚姻(婚姻挙行地)

日本人の実質的成立要件

日本法(法例131項、フィリピン民法15条、フィリピン家族法261項但書)*1

日本法フィリピン民法15条、フィリピン家族法261項但書4

日本人の形式的成立要件(婚姻の方式)

日本法(法例132項、3項、フィリピン家族法261項本文。2

フィリピン法(フィリピン家族法261項本文の反対解釈ないし勿論解釈。)*4

フィリピン人の実質的成立要件

フィリピン法(法例32条の反致はならず。法例131項、フィリピン民法15条、フィリピン家族法261項但書。3

フィリピン法(フィリピン民法15条、フィリピン家族法261項但書)*4

フィリピン人の形式的成立要件(婚姻の方式)

日本法(法例132項、3項。フィリピン家族法261本文。2

フィリピン法(フィリピン家族法261項本文の反対解釈ないし勿論解釈。)*4


[注]現時点の解釈である。

*1  フィリピン民法15条についてはその「反対解釈」に拠るともいえるか。

*2 「the laws in force in the country」と規定が存する(フィリピン家族法26条1項本文)。したがって、「Those solemnized by any person not legally authorized to perform marriages」(フィリピン家族法35条2号)という婚姻であっても、また、「A marriage ceremony which takes place with the appearance of the contracting parties before the solemnizing officer」(フィリピン家族法3条3号)という婚姻でなくとも、フィリピン法上、有効ということになる(奥田安弘他訳「フィリピン家族法」27頁)。
また、このこと、つまり方式面につき日本法を準拠法にするということの意味は、婚姻挙行地が日本という前提のときに、日本法の方式(戸籍法の手続をいう。)以外の方式、たとえば、「日本にある大使館や領事館」に婚姻届を創設的に届出しても(いわゆる領事婚。但し、フィリピンの場合、フィリピン家族法10条の反対解釈により、在日比国公館にて領事婚はできない。奥田安弘他訳「フィリピン家族法」26頁。)、日本政府は創設的届出としては有効と認めず、したがって、日本の市区町村では、そのような経緯で在日外国公館から発行された婚姻証明書をもって「報告的」婚姻届を受理することはできない、という意味合いになる(但し、その場合でも市区町村で「創設的」婚姻届は可能で、婚姻証明書が要件具備証明書の代用をなす場合があるので、混同に注意されたい。報告的婚姻届ならば、署名は単独でよいし、成年の証人も不要である。親とケンカして証人になってくれない人は先に外国で成立させればよいことになる。レジストラ111・199。)。同様の趣旨で、婚姻挙行地が日本という前提のときに、日本にある教会等で創設的に婚姻届しても、たとえ、その種の教会婚を認容する外国だったとしても、日本政府は創設的届出としては有効と認めない。
もっとも、婚姻挙行地が日本なのか外国なのか、それ自体が不明な場合がある。たとえば、物理的に日本に日本人と外国人が在るとする。この状態で日本人が外国所定の婚姻届書ないし申請書の類に署名をし、国際郵便で相手方の国へ送り、その国で「創設的な」婚姻の届出ないし登録ないし登記を有効にしたとする(なお、フィリピンの場合、本人出頭主義のため、これは出来ない。)。これは日本法上、有効か、という問題。現在(日本の法例の改正後)の実務解釈では、無効である。理由は、その場合の法例13条2項3項の「婚姻挙行地」は、日本であると「解釈」するためである(レジストラ111・89)。
このように渉外婚姻は婚姻挙行地がどちらの国なのかの区別が重要である(奥田安弘他訳「フィリピン家族法」26頁)。
それでは、物理的に外国に外国人が在り、日本に日本人が在って、この状態で日本人が外国所定の婚姻届書ないし申請書の類に署名をし、国際郵便で相手方の国へ送り、その国で「創設的な」婚姻の届出ないし登録ないし登記を有効にした場合はどうか(なお、フィリピンの場合、双方出頭主義のため、これは出来ない。)。明言した文献に乏しいが、「婚姻すべき当事者の一人が」外国「に存在し、かつ」、外国にある政府機関「に婚姻届を提出しているので」、当該外国「が婚姻挙行地」とみるのが相当と解するべきであろう(参考、レジストラ111・68下段)。したがって、これは有効と解される。実質的にも、これのまさに逆の場面で中国政府が有効に解したのが平成14年8月8日付け法務省民一第1885号民事第一課長通知であると考えられ、相互主義的見地からも有効と解するべきである。

*3 「even though living abroad」(フィリピン民法15条)で実質的成立要件につき、日本に在る比国人にも適用が存する。そして、「except those prohibited under Articles 35 (1), (4), (5) and (6), 3637 and 38」(フィリピン家族法26条但書)。したがって、これらの実質的成立要件に反する婚姻は「valid」ではない。そして、法例32条の「反致」もない。この結果、法例13条1項により、フィリピン人と日本人の婚姻当事者の組み合わせで、日本を婚姻挙行地とする場合、市区町村は、フィリピン人については、フィリピン法の要件を検討しなければならない。したがって、厳密には、市区町村の職員はフィリピン家族法やフィリピン民法も(日本民法に加えて)勉強しなければならない。しかし、日本民法をそれなりに押さえるだけで3年はかかる。

*4 奥田安弘他訳「フィリピン家族法」28頁以下。

[日本法の視点ないし成立要件]  試論2005Aug13

 

日本で婚姻(婚姻挙行地)

フィリピンで婚姻(婚姻挙行地)

日本人の実質的成立要件

日本法(法例131項)

日本法(法例131項)。*5

日本人の形式的成立要件(婚姻の方式)

日本法(法例132項、3項)

フィリピン法(法例132項、3項)

フィリピン人の実質的成立要件

フィリピン法(法例32条の反致はならず。法例131項、フィリピン民法15条、フィリピン家族法261項但書。

フィリピン法(法例131項)

フィリピン人の形式的成立要件(婚姻の方式)

日本法(法例132項、3項)

フィリピン法(法例132項、3項)


[注]現時点の解釈である。

*5 したがって、フィリピンで有効に成立した場合、フィリピンの国際私法によれば、日本人側につき、実質的成立要件が日本法で判断されるとされるので(奥田安弘他訳「フィリピン家族法」28頁以下)、日本法下において、瑕疵が付着する場合は多くはないであろうと解される。この点は、フィリピンの場合と異なることになる(フィリピンで婚姻した場合、日本人側の実質的成立要件は、フィリピン政府の視点では、フィリピン法が準拠法である。)。このように、外国法の視点と日本法の視点で異なる場面があるので、本サイトでは、一応、分けて表を掲げることを試みてみた。フィリピンの場合と比較されたい。

[法例](参考)
第十三条 婚姻成立ノ要件ハ各当事者ニ付キ其本国法ニ依リテ之ヲ定ム
2 婚姻ノ方式ハ婚姻挙行地ノ法律ニ依ル
3 当事者ノ一方ノ本国法ニ依リタル方式ハ前項ノ規定ニ拘ハラズ之ヲ有効トス但日本ニ於テ婚姻ヲ挙行シタル場合ニ於テ当事者ノ一方ガ日本人ナルトキハ此限ニ在ラズ

第三十二条 当事者ノ本国法ニ依ルヘキ場合ニ於テ其国ノ法律ニ従ヒ日本ノ法律ニ依ルヘキトキハ日本ノ法律ニ依ル但第十四条(第十五条第一項及ビ第十六条ニ於テ準用スル場合ヲ含ム)又ハ第二十一条ノ規定ニ依リ当事者ノ本国法ニ依ルベキ場合ハ此限ニ在ラズ

[フィリピン家族法] (原文抜粋)
Art. 3. The formal requisites of marriage are:
(1) Authority of the solemnizing officer; (2) A valid marriage license except in the cases provided for in Chapter 2 of this Title; and (3) A marriage ceremony which takes place with the appearance of the contracting parties before the solemnizing officer and their personal declaration that they take each other as husband and wife in the presence of not less than two witnesses of legal age. (53a, 55a)
(筆者注:末尾の「(53a, 55a)」は、「(フィリピン民法旧53条、55条)」を指し、対応する旧規定の参照用であると解される。なお、末尾に「( n )」があるときは「(新設)」の規定であることを意味すると解される。他も同じ。奥田安弘他訳「フィリピン家族法」参考。)

Art. 10. Marriages between Filipino citizens abroad may be solemnized by a consul-general, consul or vice-consul of the Republic of the Philippines. The issuance of the marriage license and the duties of the local civil registrar and of the solemnizing officer with regard to the celebration of marriage shall be performed by said consular official. (75a)
(筆者注:類似の外国法として、中華人民共和国婚姻登記条例(新法)19条。戸籍時報562・119。)

Art. 26. All marriages solemnized outside the Philippines, in accordance with the laws in force in the country where they were solemnized, and valid there as such, shall also be valid in this country, except those prohibited under Articles 35 (1), (4), (5) and (6), 3637 and 38. (17a)
Where a marriage between a Filipino citizen and a foreigner is validly celebrated and a divorce is thereafter validly obtained abroad by the alien spouse capacitating him or her to remarry, the Filipino spouse shall have capacity to remarry under Philippine law. (As amended by Executive Order 227)
(筆者注:「3637」は「36, 37」の誤りか。)

Art. 35. The following marriages shall be void from the beginning:
(1) Those contracted by any party below eighteen years of age even with the consent of parents or guardians; (2) Those solemnized by any person not legally authorized to perform marriages unless such marriages were contracted with either or both parties believing in good faith that the solemnizing officer had the legal authority to do so; (3) Those solemnized without license, except those covered the preceding Chapter; (4) Those bigamous or polygamous marriages not failing under Article 41; (5) Those contracted through mistake of one contracting party as to the identity of the other; and (6) Those subsequent marriages that are void under Article 53.

[フィリピン民法] (原文抜粋。なお、フィリピンでは家族法と民法は異なる。)
Art. 15. Laws relating to family rights and duties, or to the status, condition and legal capacity of persons are binding upon citizens of the Philippines, even though living abroad. (9a)

<引用文献とその略称>
●奥田安弘他訳「フィリピン家族法」=J・N・ノリエド著、奥田安弘、高畑幸訳「フィリピン家族法」明石書店、2002年。
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